腰痛が、どのように経過してゆくのか?まとまった研究は少なく、十分に解明はされていません。
それでも、いくつかの研究があり、以下にならべます。「腰痛診療ガイドライン2019」
1.急性腰痛患者さん(痛み出して4週間以内)と慢性腰痛患者さん(痛みが3か月以上つづいている)たち合計11,166人が、どういう経過をたどるのか。急性腰痛患者さんでは、最初のひと月半で痛みは半分になりました。半年後には更に半分、一年後には更に更に半分(元の約10%程度の腰痛)になっていたという結果です。対して慢性腰痛患者さんでは、最初のひと月半で痛みは60%くらいになりましたが、半年後で50%くらい、一年後でも45%くらいの腰痛がつづいていました。
あわせて、日常生活がどれくらい送れるのかをみた場合、急性腰痛患者さんでは、痛み出した時の日常生活の程度はひと月半、半年、一年と時間がたてば倍々に出来ることが増えます。逆に慢性腰痛患者さんでは、日常生活の程度も制限がつづいていました。
2.非特異的腰痛(原因が多彩で、診断と治療法がまだわかっていない腰痛。腰痛の85%。)の患者さんがたどる経過については、最初の3か月で約3割の方で症状の改善がありましたが、65%の方は一年後にも腰痛が続いていました。非特異的腰痛で多くの患者さんは、自然に痛みがなくなることは無いという結論です。
3.非特異的腰痛の患者さんのうち、救急外来を受診するくらい痛みの程度が強い場合は、3か月たっても約4割で強い痛みが続きます。そして、約半分の患者さんが痛み止めを服用し続けています。
4.腰痛が長引く原因については、はっきり解明されていません。精神的な面が関係するという研究があります。4,683人の患者さんでの研究です。「良くならないのでは・・」といった不安をもっている場合と、そうでない場合を比べたとき、不安のある患者さんでは、3か月以上、仕事ができない割合が、不安のない患者さんの2倍もありました。
5.腰痛がよくなるためには、「運動の習慣がある」、「若い」、「健康状態が良い」、「身体能力が高い」、「精神状態が良い」といったことがいわれています。
6.腰痛が長引いたり、繰り返し起こる原因としては、「以前に腰痛があった」、「加齢」、「肥満」、「タバコをすう」、「うつ状態」、「交通事故」、「170cm以上の高身長の女性」、「教育を受けていない」、「重いものを扱う仕事」、「働き甲斐のない仕事をしている」、「あちこち痛む、訴えが多い」といったことがいわれています。
こうしてみてみると、腰痛がどうなるか?どうして長引くのか?長引く原因は?・・・まだまだわからないことだらけなのです。
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