私が、いつも心掛けていること。
と、いうか、脊椎脊髄外科診療において、確定診断をつけて、治療に結び付けるための王道だと考えているプロセスがあります。患者さんの痛みやしびれをとるための肝です。
それは、①主訴、②神経診察所見、③それらを裏付ける検査所見、の3つが矛盾なく合致して、それではじめて診断に結び付きます。一つでも繋がらないおかしなところがあると、確実に誤診となります。
その中でも、最も重要な要素は①主訴、患者さんの訴えです!!
患者さんは、何らかの訴えをもって病院を受診されます。その表現方法は、実に様々です。なかなか、ご自身の体で困っていること、辛いこと、痛いことを、上手く伝えられない場合があります。もどかしい時間を過ごすこともあります。
でも、それでいいんです。患者さんの中には、ご自身の言葉、身振り、表情で伝えようとして下さるだけでなく、時には前もって文章にしてくださることもあります。どんな表現方法でもいいんです。
医師は、患者さんの漠然とした訴えの中から、その中心であり核となるポイントを抽出します。丁寧に真摯に、何度も繰り返しながら、傾聴することが一番重要なプロセスです。
今日の午前中は、北陸方面で脊椎外科外来をしていました。私は、もともと関西の出身で、北陸の方とは、訛りが異なります。時々、意思疎通が困難になることがあります。
私が、「歩くのはどうですか?」とたずねたところ、患者さんは「アルコールはどうですか?」と受けて、「私は全くやらないんです」とお返事いただきました。その方は70歳台後半の患者さんで、右耳が聞こえず、左耳も難聴でした。それに加え北陸と関西と、お互いにガチンコの訛り同志でやりとりをしていたため、およそ1時間くらい問答をしていました。
最終的には、身振り手振り、筆談を駆使して、なんとか主訴を抽出しました。
その訴えをもとに診察を行います。神経診察もなかなか進まず、時間がかかりましたが、それでも必要十分な所見が得られました。
このやり取りの時間が、患者さんと医者とが信頼関係を築く重要なプロセスなのです。MRI、CTや電気生理検査、その他の検査などは、苦労せずとも実行できます。そんなものは二の次なんです。
患者さんは、言いたいこと、わかってほしいことを存分に病院に、医師にぶちまけましょう!それが「受診する」ことの本当の意味です。
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