地域の開業医院の先生から、患者さんのご紹介がありました。
開業医院・診療所と病院との連携を「病診連携」、病院と病院との連携を「病病連携」などと言います。
要するに、平時は診療所でかかりつけの先生にフォローしていただき、有事になるとかかりつけの先生から我々の病院へ紹介していただく仕組みです。
この仕組みのメリットは、なんと言っても患者さん一人一人に「かかりつけ医」が決まることです。
病院の勤務医は、高度な検査や手術などで手一杯です。外来の待ち時間も長くて、患者さんにいつも迷惑をかけてしまいます。
自宅近くにかかりつけ医がいると、不意に調子が悪くなった時など、とても頼りになります。
また、急性期病院では、入院期間も決まっていて長期の療養はできません。これからの高齢化社会では、手術などを終えて、リハビリをした後は在宅で療養をする機会が多くなります。そんな時でも、かかりつけ医が訪問診療などを行って、地域を支えていただけます。
ますます、診療所、かかりつけ医の役割が増してくると思われます。
病診連携で、最も重要なことは、なんと言っても患者さんが診療所からスムーズに病院へ紹介され、病院で高度な治療を受けた後はスムーズに診療所へ逆紹介されることです。
スムーズに紹介、逆紹介するためには、診療所と病院とが「強い信頼関係」を持っていないといけません。
本日紹介頂いた患者さんは、75歳女性です。強い右ふくらはぎの痛みがあり、夜も眠れないとのことです。
2年前に近くの診療所へ受診され、腰部脊柱管狭窄症の診断にて他の総合病院へ紹介され腰椎手術を受けましたが、その後も症状がとれずにいました。その病院では、症状がとれいてないにもかかわらず、「もう治った」「もうやることはない」と言われ、患者さんは診療所へ逆紹介されたらしいです。
診療所のかかりつけ医が、もう一度診察したところ変形性腰椎症が疑われて、再度総合病院へ紹介されましたが、やはり「もう治っている」との一点張りだったらしいです。
仕方なく、かかりつけ医が我々「大津脊椎脊髄センター」へ紹介いただきました。
私の診察では、右下肢の筋力低下、アキレス腱反射の低下などを認め、変形性腰椎症による右L5、S1神経根と診断しました。患者さんに聞くと、先の総合病院ではろくに診察もしないで、検査画像だけを見て治ったと言っていたらしいです。
丁寧に、真摯に診察すれば、患者さんの主訴に合致する神経所見が得られます。そして、その所見から逆算して検査画像を見直すと、しっかり悪いところが見つかりました。
近々、検査入院をしていただき、確定診断が付いたならば、手術を行って、患者さんを痛みから解放したいと思います。
このように、真摯に患者さんの訴えを聞き、しっかり治療して治して、かかりつけ医に逆紹介する。これこそ信頼関係を築く奥義です。これこそ病診連携です。
ベストを尽くします。
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