皆さん、こんばんわ。タイトルのごとく、ほとんど眠れない当直明けの一日がやっと終わりそうです。そんな中、本日の外来で印象に残った患者様のことを報告します。その方は御年96歳!!ふだんから腰痛を主訴に外来受診されています。現在は、コロナ禍でもあり外出を控えておられますが、数か月前まで一日に一万歩は歩いておられたとのことです。当院の理学療法を気にいっていただいており、①頚椎の牽引、②腰椎の牽引、③マッサージ、④ウォーターベッド、➄電気治療とフルコースで、いつも受けていかれます。「ウォーターベッド」がとても気持ちいいとのことで、いい笑顔で過ごされています。腰痛は、変形性腰椎症が原因ですが、ご自身の年齢から、手術はおろか検査もお薬も希望されず理学療法だけで痛みとお付き合いされています。50歳の時に乳がんを患い手術を受けたとのことですが、その後は96歳までとてもお元気です。痴呆状態を鑑定する「長谷川式痴呆スケール」も満点の30点をたたきだし、全くもって頭脳明晰!人生の先輩に対し後輩として頭が下がります。
国際疼痛学会によると痛みの定義は「不快な感覚性、情動性の体験」となっております。定義に挙げられている、どの言葉をとっても曖昧でとらえどころのない非科学的な印象があります。患者様の「体験」が重きをなすこの分野は、その治療対象が曖昧であるが故に、診療方針の決定には患者様お一人一人を真摯に診療し、粘り強く、患者様からいただいた所見や検査データをもとに客観的なエビデンスに基づく治療をなすことが重要です。ただし、ここで強調したいことは、医者の独りよがりで、医者が良いと信じる治療を強引にすすめることは禁忌ということです。痛みに対する治療手段は、患者様の生活環境(住居、家族など)や他の併存疾患(高血圧、糖尿病など)の治療状況
によってその対応が変わります。患者様ご自身が感じる痛みの体験と、どう向き合っていきたいのか。患者様が望む痛みとの過ごし方を、医者と患者様が十分にコミュニケーションをとって決定してゆくことが重要です。我々、大津脊椎脊髄センターでは、決して独りよがりになることなく、患者様と丁寧に最善の治療方針を探ってゆくことをモットーにしています。
また、本日は別の3名の患者様に手術説明を行いました。5月中に手術予定となっています。その方々は、全て頚部脊柱管狭窄症でした。右図のように、頚椎の真ん中にある脊髄が通過する空間が狭くて神経の症状(首の痛み、手指のしびれ、力が入らない)が出現している方々です。このような患者様には頚椎椎弓形成術を提案します。
左図は、すでに手術を終えた患者様の画像です。頚椎の真ん中にある脊髄がとおる空間が人工骨によって拡大されていることがわかります。脊髄の圧迫がとれて、神経の症状がとれます。また、詳しい内容になりますが、頚部脊柱管狭窄症はそれだけで発症することもありますが、頚椎症性神経根症が一緒に出現することが多い疾患です。しっかりと、両方ともに治療することが重要です。詳細については、今後、本ブログでもわかり易く紹介していきたいと思います。
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